短編小説

オリジナル短編小説~#6「明日は絶対サウナに入ります。」1.サウナにはまったのです~

ストーリー

ある日の出来事がきっかけで突然サウナにハマってしまった主人公。
新社会人として新たな生活が始まるも、常にサウナのことが気になってしまう。
サウナに入るためにどう仕事を早く済ませるのか。
嘘をついたり、それがバレたり 時には褒められたりのコメディ。
サウナの良さを、サウナの虜になった主人公が伝えます。
自分が題材のサウナーによる、サウナーのための、オリジナルフィクション物語。

今日も彼はいつものように家の近くの銭湯へ通う。暗い路地にぼんやりと光るその建物にはどこからともなく人が現れては吸い込まれていく。彼もその1人である。

「うしっ、いよいよこの銭湯も今日で最後か〜」

彼は来月から東京の会社で働き始めるため、明日にはこの街を出る予定なのです。

「あ、ヒロくんじゃない。いらっしゃい」

「あ、おばちゃん。こんばんわ〜。あ、これ500円ね。」

「いいよいいよ。今日ぐらい。もう明日からは東京なんでしょ。私からの奢りね。」

「まじすか〜。ありがとっす。ではお言葉に甘えて。しっかり堪能してきますね」

「は〜いよ〜」

彼はそそくさと服を脱ぎ捨てると、湯気の立つ浴場へと駆け出した。体を洗い終えると、いつもはそのまま湯に浸かりにいくのだが、ふとあるものが目に入った。

そう、サウナだ。

よくこんなのに入るよな〜。どう考えても拷問部屋にしか思えないし。た〜だ、好奇心だけで生きてきた俺が入らないわけにはいかないんだよな〜、これ。

彼は今までサウナに入ったことがなかったので、ここの銭湯は今日で最後だから
という理由で入ることにした。

「あつっ!!」

室温は90℃。

“90!?はえぇ〜。ふっつうにやばいでしょ〜これ。もう汗吹き出してるよ。というか、ジーーーーーーっとしてるこのおっちゃんら、なかなかやりおるわ。

彼は本当によく喋ります。
頭の中のもう一人の自分と。。。

5分が経っただろうか。少し頭がぼーっとしてきた彼はそそくさと部屋を後にした。

サウナ室の前に設置してあるウォーターサーバーの冷えた水をゴクリ。

「ファーー!」

こんなにうまい水があるかね。諸君。
みたまえ、この透明で純粋無垢な液体を。五臓六腑に染み渡るこの天然水、是非あなたの店でも販売してみませんか?

彼はウォーターサーバーの前で1人何を実演しているのだろうか?頭の中での会話が激しすぎて、もはや奇人と化してしまっている。

そうこうしていると、どこからともなく声が聞こえてきた。

「おい、そこの兄ちゃん。休んどらんとすぐ水風呂入りぃや」

周りを見ても視線の先には俺しかいない。俺に言ってるのだろうか。
よし、断ろう!

「え?あ、俺?あ、はい、今すぐ」
あ、、、間違えた。

 

水風呂の温度は13℃。

キンッキンに冷えてやがる。まさに、冬の海に放り出されたような感覚だな。もう、出よう。出させてください。

上がろうと腰を上げた矢先だった。

「兄ちゃんサウナには普段入ってないでしょ」

っっっておぉぉい!!
誰がどうみても上がろうとしてたよね、俺。そうだよね?

そう、彼の特技というべきか、なんというか、いつも都合の悪いタイミングで引き留められるのだ。もはや悪運と言えよう。

「あ、はい。初めてっすね、たぶん。はい。。。」

「サウナに入ったら水風呂入らなあかんで。そんでそこの椅子で休むんや。気持ちええで。」

「はぁ、そうなんすか。気持ち良いのがあんまり分かんないっす」

「まぁとにかくやってみぃ」

「はぁ」

彼はコンマ1秒たりとも無駄にせず水風呂から上がった。水風呂から上がる速さならウサインボルトにも負けてない自信がある。というかその自信が今ついた。

「休めって言われもな〜。」

ん?、あ、え?あのおじさんめっちゃこっち見てくるじゃん。看守かよ、怖いよ!

隣のおっちゃんでも真似してしのいでみるか。
椅子に座って、腕組んで、目を瞑る。で良いのか?こんな感じか?

グォォォォォオ、、、ファァァ〜ン(脳内麻薬発生中)

「へっ??」

「兄ちゃん、逝ってもうたんやな」

「ふぇ??」

彼には初めての感覚だったのだ。いわゆる「ととのう」という状態を体感したわけだ。

「兄ちゃん。それをととのうっていうんだよ。体の奥底からお花畑が広がってたやろ。ふぁーんふぁーんって」

「はい、ふぁーんふぁーんでした。」

「せや、ふぁーんふぁーんや」

この2人はなんの会話をしているのだろうか?

以心伝心したまさに動物同士の対話である。

 

そしてこの日、彼が人生で初めてサウナにハマった瞬間でもあったのだ。

ABOUT ME
ヒロ
社会人2年目/23歳/趣味はゲーム・サウナ・サッカー&フットサル・読書・BABYMETALです。 ヒロの人生放浪記1(はてブ版)→https://t-nero.hatenablog.com/