読書から学ぶシリーズ第七弾。
今回は「Psychology of Money-サイコロジー・オブ・マネー」を読んでみました。
~読書から学ぶ~
経済的成功のカギは「ソフトスキル」
学歴もなく、専門的訓練もお受けておらず、経歴も実務経験もなく、人脈もない人間が、最高レベルの学歴、専門的知識、人脈を持つ人間のパフォーマンスを大幅に上回ることなどあるのでしょうか?
ファイナンスの世界でそんことが起こり得る成果を出せる理由が2つのことから説明できるとこの本では伝えています。
「運」に大きく左右される
経済的な成果は、知性や努力とは無関係の「運」に左右される部分が大きいからです。
ハードサイエンス(物理学・数学など)とは異なる
経済的な成功は、「何を知っているか」よりも「どう振る舞うか」が重要であるからです。その振る舞いを本書では「ソフトスキル」と呼び、このソフトスキルを「サイコロジー・オブ・マネー(お金の心理学)」と呼んでいます。
金融は数学に基づいた分野だとみなされている為、複雑で測定が難しい人間の行動心理が関わった際に大きく理論値から逸脱してしまいます。
お金の経験
人はそれぞれ違います。世代も親の収入も価値観も違います。生まれた地域、経済圏、色々な複雑に絡み合った度合いの運を体験しています。そのため、お金の考え方も人それぞれです。ある人にとっての「お金の使い方」や「お金の考え方」は、また別のある人にとってはおかしなことと考えることは十分に起こ得ます。
誰もがそれぞれのお金の経験をしているため、信念・人生の目的・将来の見通しが全く異なります。どちらが優れているのか・賢いのかという問題ではないのです。
人の投資判断
理論上「人々は、それぞれの経済的な目標や投資対象の特徴を加味して投資判断を行っているはずだ」と考えられていました。しかし、実際はそうではなく、「その人が同時代に経験したこと、特に成人して間もない頃の経験に大きく左右される」ことが明らかになったのです。
その為、個人の投資の際に考えるリスク許容度は、知性でも教育でも教養でもなく、「いつ、どこで生まれたのか」という偶然の運要素が投資の判断を左右していることがわかったのです。
貧困層が宝くじを買う理由
貧困層は高所得者の4倍も宝くじを買っているというのです。人は経済的な判断を行う時、その時点で得た情報を自分独自の「世界の仕組み」に当てはめて正当化しています。
貧困層側の視点から考えてみます。
“毎月のわずかな給料でなんとかやりくりしており、貯金をする余裕がない。贅沢な休みも過ごすのは夢のまた夢だし、大きな借金を背負わなければ子供を大学に通わせることもできない。私たちにとっての宝くじは、豊かな人たちが当たり前のように享受しているものを手に入れる唯一のチャンスなのだ。豊かな人たちは夢のような生活をしている。だから私たちはそんな夢のような生活を送るために宝くじにお金を注ぎ込むのです。”
お金がない時に無理をしてまで宝くじを買うのは良くないと思いますが、私自身この考え方はよくわかります。だから、自分の中で妄想したストーリーをつくることで、数字上当たる確率がほとんどない宝くじに夢を見てしまうのだと思います。
成功にも失敗にも運が関わっている
逆に「失敗」の時も運が関わっていることを考えられていません。目標が達成できないのは運ではない何かが足りていなかったからと考えてしまいます。もし会社が倒産しても、努力が不足していたから?怠けていたから?もっと考えていなかったから?と考えてしまうのが当たり前です。しかし、それらが当てはまるのはどの程度なのでしょうか。あまりにも複雑すぎるので、それを考えることはできません。
その時の最善の判断をしても失敗はしますし、最悪な判断でも成功することはあります。
ここから学べることは、「あの成功者がしたことと同じことをしよう」「あの失敗者がしたことは避けよう」とそこにだけ教訓を見出そうとすることはやめるべきということです。
再現性のある部分と運による部分が明確にわからない以上どれも結局は「成功と失敗は紙一重」「称賛と批判は紙一重」だからです。
お金を扱う基本的な考え方
富を比較しない
たとえ周りの人より倍の年収でも世の社長の年収には及ばないですし、日本一の富豪になったとて世界を見ればさらに上がたくさんいます。他人と収入の比較をしてもキリがないということです。いくら頑張っても努力しても頂点に君臨することはほぼ不可能です。大切なのは「初めから戦わないこと」です。周りよりも年収が少なくても自分が「これで十分だ」と満足していればそれで良いのです。
待ちの姿勢
投資を行う上で「複利」はよく考えられていることですが、この「複利」の効果を十分に享受するためにはじっと待つということが重要になります。複利のもたらす効果は時間経過によって異なります。その期間が長ければ長いほど指数関数的に資産が増え続ける魔法の事象なのです。
複利の最大限の効果を発揮するには、ハイリスクハイリターンを続ける投資とは真逆で、ローリスクローリターンの投資を延々と10年20年の期間で続ける地道なものです。しかしそれがいつしかローリスクハイリターンに変化し、いずれほぼノーリスクハイリターンに変化していきます。
半分失敗しても成功できる
金融に関して言えば半分の失敗があっても成功することは可能です。どんなに優れた人間でも10回に6回は間違います。常に最良な判断ができる人は存在しません。
世の中のいくつもの成功者の体験談も成功事例も、数えきれないくらいの失敗の上に存在しています。私たちは1つの成功例を生むために生み出された無数の失敗にただ気づいていないだけなのです。
最も大事なのは、「正しいか間違っているかの判断よりも、正しい時にどれだけ稼ぎ、間違っている時にどれだけ損失を抑えられるのか」なのです。
お金が人生にもたらす最大の価値は「自由」
何が人を幸せにするのか。
他と比べて明らかに幸福度が高い人が存在し、それらの人に共通しているのは、収入や地域や教育ではなく、「人生は自分でコントロールしている」といった感覚をはっきり持っていることなのです。
つまり、どんなに高い給料をもらって大きな家に住んでいても、「好きな時に好きな人と好きなことができる」生活を送れることの方が人を幸せにするのです。
そして、お金が私たちにもたらす最大の価値がそれなのです。
少額の蓄えがあれば仕事を多少休んでも問題なく生活を送ることはできます。より多くの貯蓄があれば解雇に恐れることなく新しい職場を探すことも可能です。さらに増えれば人生の選択肢が増えます。
「モノ」の自由ではなく、「時間」の自由が人を幸せにする
米国の高齢者1000人に「彼らが長い人生経験から学んだ最も重要な教訓は何か?」と聞いたインタビューがある。
誰一人として「裕福になることが成功だ」「欲しいものを買うためにもっと働いて稼いでおけばよかった」というような返答をした人はいなかったという。
彼らが大切にしていたのは「温かい友情」「子供たちとゆったりと過ごす充実した時間」であった。また子供が親に望むのは、親のお金ではなく親が自分と一緒にいてくれる時間であるという。
「モノよりも時間の自由が人を幸せへと導くのである」これこそが先人達からのアドバイスなのです。
過去の自分に囚われない
この本では、「18歳で大学の専攻を決める時に選んだ分野だからという理由で、生涯そのキャリアに忠実であり続けようとする人たちは実にもったいないことをしている」と伝えています。
確かに、お酒も飲めないような年齢に選んだ仕事を、年金を受け取る年齢になっても楽しく続けられる確率がどれだけ低いことかは想像がつきます。
さらにここでは「サンクコスト」について言及されています。
サンクコストとは
すでに投じられた回収不可能なコストのこと
このサンクコストがあるからこそ未来の自分を過去の自分の囚人にしてしまいます。
今の自分から見れば別人のような過去の自分が仕立てた経済的な目標を、無条件に生命維持装置をつけて延命させようとしてはいけません。必要な場合は思い切って捨て去る判断をすべきです。
過去の自分の判断に固執しすぎると、いざというチャンスに身を投じることができなくなります。
私自身、大学では食品を学び、現在は食品会社で働いています。元々、頑固で現状維持派だった私は新卒就職時からこの会社で働き続けると思っていましたし、それに疑いも持っていませんでした。
しかし、入社してから2年後にはIT業界へ身を投じ、自分の目指す将来に向かって努力しようと行動するとは思いもよりませんでした。そして行動した結果、転職にも成功し、全くの異業界・異業種という環境で3月から働くことができるのです。
最後に
総じて考えると「お金」に固執しすぎず、計画的に時間をかけて増やすことが大切だとわかりました。その上で、お金があることのメリットを考え行動していき、間違った選択をした時には修正していくことも重要だと気づきました。
私は、突き詰めれば「幸せの作り方」に通ずるものだと感じました。私自身これからもこういった考え方を参考に人生を歩んでいこうと思います。