読書から学ぶシリーズ第四弾。
今回は「5G-2030年への活用戦略-」を読んでみました。
立ち寄った書店でふと目に入った目立つ色の本を見てみると、表紙に大きく「5G」の文字が。よくよく考えてみると意外と分かりそうでよく分かっていない「5G」に関して少し気になったので買って読んでみることにしました。
ということで、今回はこの本から「5G」について、一体どんなものでどんなことが出来るのか、そもそも私たちの暮らしに関係があるものなのかを学んでいきます。
~読書から学ぶ~
5Gとは
第5世代移動通信システム(5th Generation)のこと。
1G:アナログ無線による通信規格。初の移動体通信。(1980年代)
2G:デジタルの通信規格。
iモードによるメールやインターネットの使用が普及。(1990年代)
3G:高速通信規格。映像や音声の送受信が可能となる。(2000年代)
※ちなみに「LTE」はほぼ4Gに近いことから3.9世代と呼ばれています。
4G:大容量&高速通信規格。(2010年代)
5G:超大容量&超高速通信規格(2020年代)
「5G」は次世代の情報通信インフラとして期待されています。
5Gの多彩な機能と社会経済面での利活用の可能性
5Gでは4Gに比べておよそ100倍の超高速通信や超低遅延・同時多数接続が可能になることで、4Kや8Kといった超高精細映像をストレスなく送れるようになります。動画視聴時に読み込みが入るストレスやVR(仮想現実)などの大容量データのやり取り、その他観光、医療、テレワークなど今以上に使い勝手が良く低コストで行えるようになります。
5Gがなぜ今注目を集めているのか
現在の日本では、地方の衰退&東京一極集中、少子高齢化&働き手不足などさまざまな課題を抱えています。人口が減少していく一方で平均賃金は20年以上横ばいであったり、地域間格差や、育児・教育環境の整備が間に合っていないといった状況となる地域が確実に増えています。また、コロナによって世の中の考え方・働き方が大きく変わり、それに伴い多くの企業がいろいろな選択を迫られる変革が起こる時代が訪れました。
こうした課題や新たな時代に対応し解決していくカギとなるのが「5G」だと言われている為、現在多くの注目を集めているのです。
世界で始まるサービス合戦
現在、世界では多くの国々が5Gに対して熱視線を送っています。
5Gのサービス開始については、2018年後半から米国を含む一部の国々で動きが見られ、米国と韓国が2019年4月、初の商用サービス開始を巡って熾烈な先陣争いを繰り広げ、米韓共に「世界初」を謳う異例のスタートとなりました。
先手を打ったのは米携帯電話首位のベライゾン・コミュニケーションズでした。当初予定より早い4月3日に、「イリノイ州シカゴ」と「ミネソタ州ミネアポリス」の2都市で始めた、と発表し、韓国側が4月5日開始を予告していたこともあり米側が先んじた格好となりました。
しかし、これに対し韓国側は4月3日の午後11時に突如携帯電話を扱う支店が閉まっている時間帯にもかかわらず、「世界初の加入者が生まれた」と一斉に発表する事態に。。
日本での5G商用サービス
4つの移動通信事業者である「NTTドコモ」「KDDI」「ソフトバンク」「楽天モバイル」が2020年3月末に相次いで商用サービスを開始しました。
米韓に比べスタートが遅いように感じられますが、米韓がまず初めに目指したのは5Gの三大機能のうちの「超高速・超大容量」のサービス提供でした。しかし、あくまでも日本が目指しているのは①超高速・大容量②超低遅延③同時多数接続の三大機能の活用です。
それにより、5Gを社会基盤とした日本の再生・創生を、10年後の2030年までに実現するのがとりあえずの日本のゴールではないかと思われます。
4Gとの共存
5Gの展開には4Gの存在が大きな役割を果たします。もちろん、ある日を境にいきなり4Gから5Gへと移行することはなく、10年をかけて5Gネットワークを広げていき、最終的に4Gと置き換わるような形で整備が進んでいきます。ですので、5G導入後に4Gがすぐに使えなくなるということはありません。
現在主要国の中で地方まで際限なく4Gの利用が可能な国は、日本、シンガポール、韓国、北欧などの一部の国や地域に限られています。逆に欧米などでは光ファイバ網の整備が都市部以外にはあまり進んでいないため、5Gネットワーク整備のベースとなる4Gのカバーが出来ていない状況です。
人口減少&高齢化社会と日本の課題
ここで、現在の日本が直面している社会状況に関しておさらいをしておきます。
1.少子化と人口減少
日本の総人口は1868年の3330万人から急激に増加し、2010年の1億2806万人まで増加しました。しかしこの年を境に急激に人口が減少し始めています。推計では2060年には8674万人にまで減少すると言われています。
しかし、結婚している夫婦当たりの出生数はどうかというと、1.90でありここ最近ではあまり変化が見られません。では、なぜ少子化が進んでいるのかというと、晩婚化や生涯未婚の人口が増えている為です。
2.高齢化の進行
日本の現在の65歳以上の高齢者人口に関して、高齢化率は2020年で29.1%、2035年には33.4%にまで到達すると推計されています。この数値が表すものは「3人に1人が高齢者となる社会」ということです。
3.東京一極集中
名古屋・阪神圏では人口流入に関してはそれほどでもないのに対して、東京圏では毎年10万人強の人口流入過多の事態が生じています。傾向として、「地方からの進学や就職」で若年層が多数流入している一方で、東京圏から「地方への転居」が極端に少ない状況です。
society5.0とは何か
最近よく耳にする「society5.0」とは、我が国の国家戦略における新しい社会の姿、近未来のビジョンのことです。その名の通り第5段階の社会像のことで、人類がこれまで築いてきた4段階の社会、「狩猟社会」「農耕社会」「工業社会」「情報化社会」に次ぐ「データ駆動型社会」のことです。内閣府のホームページでは「インターネット上のサイバー空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」と定義されています。
society5.0で実現する社会
これまでの情報化社会では、人が行う能力に限界があるため、溢れる情報から必要な情報を見つけて分析する作業が負担であったり、年齢や障害などによる労働や行動範囲に制約がありました。また、少子高齢化や地方の過疎化などの課題に関して様々な制約があり、十分に対応することが困難でした。
society5.0で実現する社会では、IoTですべての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服します。人工知能やロボット、自動走行車、その他あらゆる技術によってイノベーションを起こし、希望の持てる社会として一人一人が快適で活躍できる社会となります。
IoTとは
「Internet of Things(モノのインターネット)」の略で、携帯電話にインターネットがつながるスマートフォンやスマホの遠隔操作や音声認識で稼働するスマート家電、時計にインターネットを接続したスマートウォッチなど、あらゆる「モノ」を「インターネット」に接続することを「IoT」と呼びます。
地域課題社会とICTソリューションの例
1.労働力:
【課題】地域の若年労働力が都市部へ流出
【解決法】テレワークの活用により若年労働力人口の流出を抑制できる。
【可能性】実際のオフィスで働いているかのような臨場感のあるテレワーク
2.教育:
【課題】入学を機に地域外に転出
【解決法】遠隔教育による教育機会の確保により、人口流出の阻止と地域活性化の担い手人材の育成が行える。
【可能性】実際に同じ部屋で学んでいるかのような臨場感のある遠隔教育
3.医療介護:
【課題】医師の全国的な偏在、予防医療の重要性増加
【解決法】遠隔医療による高度な医療の提供+クラウド上での要介護者等の健康情報を共有することで、都市部との医療格差の解消、医療従事者の負担軽減、僻地住民への医療サービスの提供ができる。
【可能性】4K高精細診断映像のリアルタイム伝送による遠隔診断、多数のセンサー+AI分析による的確な予防アドバイス
5Gと親和性が高い分野
1.4K・8Kと高精細映像
これまでは公開済みの映画や放送番組の見逃し視聴などが大半だった動画配信が、現在ではネットフリックス、アマゾンなどオリジナル作品の制作に注力しているほか、邦画・洋画・ドラマ・テレビ番組・アニメなどの豊富なラインナップを武器にかつてはテレビ放送の独壇場だった「視聴時間の争奪戦」は新段階の競争に突入しつつあります。
今後は、ネット通販・デジタルカタログ・不動産物件案内などの分野でも立体映像が活用されていくことが考えられます。
2.オンラインゲーム
ゲーム業界では、日々進化しており、立体VR映像を制作するポリゴンなどのCGの進歩により、数多くのゲームメーカーが参入しています。また、「5G×ゲーム」をテーマにした講演・展示などの多くのイベントが行われており、5Gに対する関心・期待が極めて高い分野です。
現在の主流はオンライン対戦ゲームで、5Gの高速大容量・超低遅延・同時多数接続の活用が重要になっていきます。
3.VR・AR・XR
XR(クロスリアリティ)とは
XRとは、下記のVR・AR・MRなど現実世界と仮想世界を融合し、新たな体験をつくり出す技術の総称です。
VR(仮想現実)とは
VRは「Virtual Reality」の略で、仮想世界を現実のように体験できる技術。
AR(拡張現実)とは
ARは「Augmented Reality」の略で、現実世界に仮想世界を重ね合わせて体験できる技術。
MR(複合現実)とは
MRは「Mixed Reality」の略で、現実世界と仮想世界を融合させる技術。
今後ますます高度な映像表現が可能になり、またサイバー空間上でネット対戦が可能になってくる時代にあり、5Gの高速でリアルタイムな通信環境は大きな役割を果たしていくことが予想されます。
航空機操縦や自動車運転シミュレータをはじめとし、製造業・水産業・災害対策などの訓練や技術伝承にVR/ARを活用する可能性についても、徐々に認識されてきています。さらに、医療現場におけるVR/AR利用も進んでおり、レントゲンやCTスキャンの平面画像をVRでホログラムに3D化し、臓器や患部をそのまま再現した立体ホログラムを多くの医師らがVRゴーグルで同時に視聴することで、臓器の内部を詳細に観察することができ、経験の浅い医師への技術伝承にも役に立っています。
<VR>360℃仮想世界
<AR>現実世界に仮想世界を重ね合わせる
4.モビリティ
モビリティとは
移動性・流動性・可動性・動きやすさなどの意味を持つ英単語で、移動や交通・移動手段という意味で用いられることもある。
公共交通機関や自動車などのモビリティは、少子高齢化・人口減少時代の地方創生において重要であり、過疎地域においてはいかにして「住民の足」を確保するのかが大切になってきます。また、高齢者運転による事故が頻発している状況で、非常時を含めて買い物・通院等低コストで自由に移動する手段を確保することは今後の課題ともなります。
物流の面、自由移動の面からみてもその理想形にあるのが「自動運転技術」です。レベル5にあたる完全自動運転が実現した時には、運転手が不要となり、あらゆるデータの送受信を常に行うことにより様々な課題の解決へとつながります。
携帯事業者の新たな挑戦
2019年のラグビーワールドカップにおいて、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクは5Gの商用化の前段階となるプレサービスを実施しました。観客が好きな時に選手のスタッツ(チームや選手の戦績などの統計情報)を表示したり、得点シーンをリプレイしたりすることが出来る環境を構築してプレサービスを提供しました。
また、メイン・サブスクリーンを設置して高精細度や臨場感を表現したのにとどまらず、チアリーディングタイムや元日本代表選手の試合解説を交えて一種のコンサートやショー仕立ての演出をし、パブリックビューイング以上の楽しみも提供していました。
2030年代の5Gへ
日本の5Gは、まず携帯事業者により全国的な5Gネットワークが5年から10年程度をかけて、神経網のように津々浦々に整備されていくとともに、各地方で地域限定的なサービスを行うためのローカル5Gネットワークがスポット的に立ち上がっていくことになります。そして最終的に5Gの活用の最終形態へとつながっていくわけですが、それはこれからのチャレンジにかかっていくことになります。
これからの5Gの可能性を広げるのは私たち日本国民一人一人なのかもしれません。
皆さんも一度これからの時代の変化模様に関して勉強してみてはいかがでしょうか?
では、また👋